第1幕
会社から帰宅すると、いつものようにバーチャルリアリティ(VR)ゲームの世界に没頭していた。ゲーム内で出会った美雪という少女と親しくなり、リアルよりもゲームの方が楽しくなっていた。しかし、ある日美雪から「助けて」と懇願される不可解な出来事が起こった。
翌日、私は会社に行くと上司から「最近ゲームにのめり込みすぎではないか」と注意された。確かに私はゲームの世界に夢中になりすぎていた。帰宅すると、部屋の中が散らかっていたり、知らない人の気配を感じたりと奇妙な出来事が起こり始めた。
最初は単なる気のせいだと思っていたが、状況は次第にエスカレートしていった。ゲームをしていると、美雪の姿が現れ、リアルの私に話しかけてくるようになったのだ。美雪はゲームの世界から助けを求めているらしく、私にしかできない何かを頼まれた。上司は私の異常な様子に気づき、ゲームから離れるよう強く説得してきた。しかし、私は美雪を助けるためにはゲームの世界に残る必要があると感じ始めた。リアルとバーチャルの境界線が曖昧になり、自分が何者なのかわからなくなってきたのである。
第2幕
美雪の懇願は次第に切実なものとなっていった。ゲームの世界から漏れ出す彼女の姿は、リアルの私に向かって絶え間なく助けを求め続けた。私の部屋の中を彷徨い、壁に体当たりをするといった異常な行動に走るようになった。上司は私の異常な様子を気にかけ、ゲームから離れるよう強く説得してきたが、私の心は既に美雪の存在に捕らわれていた。
リアルの世界とゲームの世界の境界線が曖昧になり、私自身が何者なのかわからなくなっていった。会社に行っても仕事が手につかず、ゲームの世界に意識を向けてしまう有様であった。美雪の存在は私の精神を蝕み、リアルの生活に深刻な支障をきたしていた。上司は最終的に私を休職に追い込むことを決めた。私はゲームの世界に残り、美雪を助けることを選んだのだ。
美雪の懇願に従い、私はゲームの世界に完全に入り込むことを決意する。上司に無理やり説得されながらも、VRゲームの機器を外すことを拒否し続けた。すると、私の意識はゲームの世界に完全に移行し、リアルの世界から切り離されていった。目を覚ますと、私はゲームの世界にいた。美雪が待っていてくれた。リアルの世界は遠く離れた存在になっていた。上司の声が遠くで聞こえたが、私にはもうリアルの世界に戻る術はなかった。自らの意志でバーチャルの世界を選んだのだ。美雪と共に新しい冒険が始まろうとしていた。
第3幕
美雪の待つ世界は、想像を絶する程に鮮やかで生き生きとしていた。空は深い藍色に輝き、大地は柔らかな緑の絨毯を敷きつめていた。遠くに聳える山々の稜線は、まるで龍が眠るかのように雄大な姿を見せていた。
私は目を見張り、この世界の美しさに酔いしれた。美雪は微笑みながら私に手を差し伸べ、「ようこそ、この世界へ」と言った。私は躊躇なくその手を取った。そして二人は、この世界の探検を始めたのである。
道行く人々は皆、私たちに親しげな笑顔を向けた。町の様子は活気に満ちており、人々の表情は穏やかで幸せそうだった。私は、この世界の住人たちの生き生きとした様子に、心から感動を覚えた。
美雪は私に、この世界の成り立ちを説明してくれた。ここは人々の想像力が創り出した世界なのだという。人々の夢や願望が具現化し、絶えず変化し続けているのだそうだ。私はこの世界の不思議さに魅了され、探検の日々に酔いしれていった。
やがて私は、この世界の住人の一人となった。リアルの世界での生活は、もはや遠い記憶となっていた。上司の声も、もう聞こえなくなっていた。私は自らの意志でこの世界を選び、美雪と共に新しい人生を歩み始めたのだった。