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宝塚スターと宇宙人の秘密

/ 13 min read /

玄人3世兄

消えたトップスター

宝塚大劇場の楽屋裏は、異様な緊張感に包まれていた。私は元刑事で現在は私立探偵として活動しているが、こんな奇妙な依頼は初めてだった。

目の前で涙ぐむ星野みどりは、宝塚歌劇団の広報担当だ。彼女は震える声で説明を始めた。

「月影かれんさんが失踪したんです。最後のサヨナラショーの直前に…」

月影かれん。宝塚きっての人気トップスター。16年のキャリアを経て、突如引退を発表し、ファンに衝撃を与えたばかりだった。そんな彼女が、最後の舞台を目前に姿を消したというのだ。

「携帯電話も通じず、誰も連絡が取れません。警察にも相談しましたが、まだ行方不明者として扱えないと…」

星野の言葉を遮るように、私は冷静に質問を投げかけた。

「月影さんの最近の様子に変わったところはありませんでしたか?」

星野は少し考え込んでから答えた。

「そういえば…最近、鷹村健太郎という芸能プロダクションの社長と頻繁に会っていました。」

鷹村健太郎。その名前を聞いて、私は眉をひそめた。芸能界の大物で、政界とのつながりも深い男だ。単なる引退後の活動の相談とは思えない。

「他には?何か気になることは?」

「実は…」星野は躊躇いがちに続けた。「西園寺美咲という女性が、最近劇場に出入りしているんです。宇宙人研究家を自称していて…」

私は思わず吹き出しそうになった。宇宙人研究家?なんの冗談だ。しかし、星野の真剣な表情を見て、笑いを堪えた。

「その西園寺という人物と、月影さんは接触があったんですか?」

「はい、何度か楽屋で話し込んでいるのを見かけました。最初は月影さんも迷惑そうでしたが、最近は真剣に聞き入っている様子でした。」

状況は予想以上に複雑になってきた。人気スターの失踪。芸能界の大物。そして宇宙人研究家。これらが一体どう繋がるというのか。

「分かりました。調査を引き受けましょう。」

私の言葉に、星野の表情が少し明るくなった。

「ありがとうございます。どうか、かれんさんを…」

その時、楽屋のドアが勢いよく開いた。

「月影さんは宇宙人に連れ去られたんです!」

乱入してきたのは、30代後半くらいの女性だった。興奮した様子で叫ぶその姿に、星野は驚きの表情を浮かべた。

「西園寺さん!どうしてここに…」

西園寺美咲。噂の宇宙人研究家は、予想以上に情熱的な人物のようだった。

「証拠があるんです!月影さんは、人類と宇宙人の架け橋として選ばれたんです!」

混乱する星野をよそに、西園寺は矢継ぎ早に持論を展開し始めた。私は冷静に観察しながら、この奇妙な状況の真相を探る決意を固めた。

月影かれんの失踪。それは、想像を超える大きな謎の始まりに過ぎなかったのだ。

山荘の秘密

翌日、私は鷹村健太郎のオフィスを訪れた。高層ビルの最上階にある豪華なオフィスで、鷹村は威圧的な態度で私を迎えた。

「月影さんとの接触は純粋にビジネスの話でした。彼女の才能は宝塚の枠を超えています」

鷹村はそう説明したが、その目は不安げだった。突然、ドアが開き、西園寺美咲が乱入してきた。

「月影さんは宇宙人に連れ去られたんです!」

叫ぶ彼女を、鷹村は苛立ちながら追い出そうとした。私は混乱する状況を冷静に観察しながら、この奇妙な出来事の背後にある真実を探る決意を固めた。

数日後、私は西園寺美咲のアパートを訪れた。部屋中に宇宙人関連の資料が散乱していた。西園寺は熱心に月影と宇宙人の関係を説明し始めた。

「月影さんは数年前から宇宙人と接触していたんです。彼女の突然の引退発表も、実は宇宙人との大きな計画の一部なんです」

最初は荒唐無稽に思えたが、西園寺が示す証拠の中には、説得力のあるものもあった。特に、月影が最近頻繁に訪れていた山中の廃屋の写真が気になった。

私は次の手がかりを求めて、その廃屋を調査することにした。山奥の廃屋に到着すると、驚くべき光景が広がっていた。廃屋の中には最新の通信機器が設置されており、明らかに誰かが使用した形跡があった。さらに、壁には奇妙な図形や文字が描かれていた。それは地球の文字ではなかった。

突然、背後で物音がした。振り向くと、そこには星野みどりが立っていた。

「探偵さん、ここまで来てしまったんですね」

彼女の表情は悲しげだった。

「実は私も、かれんさんの秘密を知っているんです。でも、まだ話せません。人類の未来がかかっているんです」

星野の告白に、私はますます混乱した。月影かれんの失踪は、単なる芸能スキャンダルを超えた、もっと大きな何かに繋がっているようだった。真相は、私の想像を遥かに超えるものになりそうだった。

真実の扉

東京の高級ホテルの一室。私は鷹村、星野、西園寺と対峙していた。三人の表情は緊張に満ちている。

「もういい加減に真実を話してもらおうか」

私が切り出すと、部屋の扉が開き、月影かれんが姿を現した。

「お待たせしました、探偵さん」

彼女の声は凛としていた。月影は静かに説明を始めた。

「私は確かに宇宙人と接触していました。しかし、それは政府公認の極秘プロジェクトなんです。人類と宇宙人との公式な交流を開始するための準備として、私が選ばれたんです」

驚愕の事実が明かされる中、部屋の空気が一変した。鷹村が口を開いた。

「私は政府と宇宙人の仲介役として、このプロジェクトに関わっていました。芸能界のコネクションを利用して、月影さんの活動をカバーしていたんです」

星野も続けた。

「私はかれんさんの活動を裏で支える協力者でした。失踪も、実は最終段階の準備のためだったんです」

西園寺は複雑な表情を浮かべながら言った。

「私は真実を察知して、独自に調査を進めていました。まさか、こんな大規模なプロジェクトだったとは…」

月影が再び口を開いた。

「人類はついに宇宙文明との交流の時を迎えます。これまでの準備が実を結び、明日、ついに公式な第一接触が行われるんです」

彼女の言葉に、部屋中が厳かな空気に包まれた。そして月影は私に向かって微笑んだ。

「探偵さん、あなたの活躍のおかげで、この計画の最終段階に入ることができました。人類の新たな章の証人になってください」

窓の外では、夜空に奇妙な光が瞬いていた。それは、地球に接近する宇宙船の光だった。

人類と宇宙文明の出会いという、予想外の結末に、私は言葉を失った。月影かれんの失踪事件は、人類の歴史を大きく変える出来事の序章に過ぎなかったのだ。

翌日、世界中のメディアが宇宙人との接触を一斉に報じた。月影かれんは、人類と宇宙人を繋ぐ架け橋として、新たな舞台に立つことになった。

私は、この歴史的瞬間の裏側で起きた数々の出来事を、誰にも語らないことを心に誓った。そして、夜空を見上げながら、人類の新たな冒険の始まりを静かに見守ったのだった。